10月14日(土)、川内ライオンズクラブは、国際交流センターにおいて、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の貴島壽男氏を講師にお招きし、「宇宙のロマンを語ろう~JAXAが見た宇宙の神秘~」を開催し、会場に集まっていただいた宇宙ファンの皆さまとともに素晴らしい時間を過ごしました。講演の概要を紹介いたします。(文責:川内ライオンズクラブ)
(講師紹介)
貴島壽男氏:種子島生まれ。昭和49年宇宙開発事業団入社。種子島宇宙センターを経て、本社勤務(人事・予算・契約業務、宇宙飛行士募集・選抜業務、宇宙実験棟「きぼう」契約業務)、再び種子島宇宙センターに勤務し、次長を最後に定年退職。現在、内之浦宇宙空間観測所にて勤務。
(第一部 宇宙に行くには)
o まずは、私が勤務します宇宙航空研究開発機構(JAXA)について、ご説明します。JAXAは、平成15年10月、日本の3つの宇宙機関「宇宙開発事業団(NASDA)」、「宇宙科学研究所(SAS)」、「航空宇宙技術研究所(NAL)」を統合し、誕生しました。1,500人の職員がおり、つくばを中核にロケットや人工衛星の開発を進め、鹿児島県にも内之浦宇宙観測所、種子島宇宙センターと2つの発射場があります。
o 皆さん、宇宙はどの高さからなのかご存知でしょうか。答えは高さ約100km。薩摩川内市から内之浦が約100kmの距離です。人工衛星の飛ぶ高さは約400kmで、薩摩川内市からだと広島と岡山の間に相当します。宇宙の特徴は、① 空気がない、② 温度差、③ 放射線、④ 無重力、の4つです。地球から宇宙に行くためには、引力、重力に負けないスピードが必要であり、ロケットが唯一の方法です。
o それでは、なぜ宇宙を利用するのでしょうか。第一に宇宙という位置を利用することで、通信放送衛星、気象衛星、測位衛星(GPS)など生活に身近な人工衛星が考えられます。BSやCS放送、カーナビ、気象予報、飛行機の航行に加え、温暖化など地球環境の監視にも役立っています。
o 次に、ロケットとは何でしょう。答えは、宇宙へ荷物(ペイロード)を運ぶための輸送手段です。ペイロードは人工衛星や宇宙飛行士です。日本のロケット開発は、糸川英夫教授の全長23cmのペンシルロケットからスタートして、液体燃料ロケット、固体燃料ロケットとより大型化を目指して来ました。今の基幹ロケットは、大型のH-ⅡAやH-ⅡB、さらには小型のイプシロンロケットとなっています。日本のH-ⅡA・Bロケットの成功率は、97.6%(40/41)と、世界よりも成功率が高いのです。なお、H-ⅡAロケットは総重量450トンで10トンの人工衛星を打ち上げることができます。
(第二部 ロケット打ち上げについて)
o ここで、鹿児島宇宙センターの二つの発射場を紹介しましょう。種子島宇宙センターには、大型ロケット発射場が配置されています。内之浦宇宙空間観測所では、固体燃料の小型観測ロケットを打ち上げています。
o 次に、打ち上げまでの流れです。本州で製作された機材は種子島宇宙センターまで搬入され、ロケットの組み立て、搭載する衛星の組み立てを行います。そして、移動発射台に接続されて、機械式のカウントダウンが始まります。移動発射台を載せたドーリー(大型台車)は、地面の中に埋められた磁石をたどり、発射点まで自動走行します。
o カウントダウンが始まり、エンジン点火、打ち上げ(リフトオフ)となります。その後、補助ロケットの分離を経て、衛星が分離されます。ロケットの追跡管制は、レーダーにより追尾します。
o 次代のロケットとして、H3を開発しています。2020年を目標に、性能を上げて値段を下げたい。一方、有人の宇宙ステーションとして、日本の実験棟「きぼう」があります。JAXAの宇宙飛行士は7名です。また、地球観測、天体観測、太陽系探査など様々な衛星がありますが、太陽系探査としては、有名な「はやぶさ」「はやぶさ2」があります。太陽系内の様々なデータを調べて、地球に帰還します。
o 最後に、これからの宇宙開発の話題を紹介します。宇宙観光旅行に向けて技術開発は進んでいますし、月や火星に移住を目指す会社も設立されています。
o 講演の終わりに申し上げたいことは、ロケットの開発は、長い年月と多くの国家予算で培ってきたものであり、国の財産として今後も維持発展させていくべきものです。また、ロケットの開発・打ち上げには、多くの関係者のご協力も欠かせません。今後とも、皆さまの一層のご理解とご協力・応援をよろしくお願いいたします。
o 私は、ここ川内は、2回目の訪問となります。新幹線で鹿児島中央駅からわずか十数分でした。聴衆は薩摩川内市の皆さんだと考えて、講演内に薩摩川内市を基点に距離の話題などを加えてみました。演題を「宇宙のロマン」としましたが、「ロ」はロケットの「ロ」、「マン」は「ロケットマン」の「マン」ということで思っていただければ幸いです。どうもありがとうございました。
(第三部 質疑応答)
Q1.①はやぶさはM-Vで打ち上がったのに、はやぶさ2はなぜH-2Aで打ち上がったのですか?
②先生が気にいってる人工衛星は何ですか?(ぼくは、イカロスやはやぶさの科学探査機です)
① 「はやぶさ」は、内之浦から2003年(平成15年)5月にM-Vロケット5号機で打ち上げられました。この時は、まだJAXAは設立(*)されてなく、日本の宇宙三機関(宇宙開発事業団、宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所)のうち、宇宙科学研究所がこの打ち上げを行いました。
「はやぶさ」は、小惑星「イトカワ」にタッチダウンに成功し「イトカワ」の微粒子を地球に持ち帰ることに成功しま した。この間、機器のトラブルがあり7年間の長い宇宙の旅をして地球に帰ってきたことに日本国民は大変感動しました。
この成功で「はやぶさ」は三つも映画化され、皆さんの宇宙開発に関心が大変高まったことも一つあり、「はやぶさ」に続く探査機の打ち上げ計画が決定されましたが、既にこの時はM-Vロケットの打ち上げは終了していたため、「はやぶさ2」は種子島から打ち上げているH-ⅡAロケットを使って打ち上げることにしました。
(*)2003年(平成15年)10月JAXA設立
② 10年前に打ち上げた月周回衛星「かぐや」と現在順調に小惑星「リユウグウ」を目指して来年半ばに到着、3年後(平成32年)に地球に帰ってくる予定の「はやぶさ2」です。
Q2.土星の惑星の一つに生命体が存在すると聞きましたが、その星の名前及びその生命体の現在分かっている範囲で教えて頂きたいです
【回答】私ども未だ存在をはっきりとは知りません。アメリカ(NASA)の無人探査機カッシーニが土星の衛星エンケラドスから噴出する水に、微生物のエネルギー源の水素分子が含まれていることから、地球以外で生命を見つけるための有力候補かも知れないとありましたが、無人探査機カッシーニは、エンケラドスで生命を見つけるための探査機ではないようで、はっきりしたことは新たな探査機を飛ばして調査しなければ分からないようです。
Q3.宇宙飛行士になるにはどうすればいいですか?
大学 体力、語学力 精神力など教えて下さい
平成20年度に行われた「国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士募集」の募集要項によると、
・自然科学系の大学卒業以上であること。
・自然科学系の研究・開発の仕事に携わった経験が3年以上であること。
・長期間の宇宙滞在に身体的・精神的に適応できること。
・英語で充分コミュニケーションがはかれること。(英検1級程度の英語力)
などの資質が要求されます。ただし、この募集条件は今後変わる可能性があります。
「自然科学系」というのは、理工学部、工学部、医学部、歯学部、薬学部、農学部、栄養学部など広く理科系の学部を指しますが、どこの大学のどの学部で何を専攻するのが良いということは全くありません。
宇宙では様々な活動が行われるため、多彩なバックグラウンド(経歴)を持った宇宙飛行士が、それぞれの得意分野を活かして活躍することが求められます。
何か一つ、自分はこれが専門だ、と言えるものを持っていて、なおかつ他の分野にも柔軟に対応できることが必要なのです。
また、学生の皆さんに対しては将来宇宙飛行士になるためにスポーツを行って丈夫な身体を作ったり、理科や数学などの基礎的な勉強をしっかりやっておくことが大切だと思います。
なお、英語は国際語として必須ですので英会話を勉強することも大切です。また、ソユーズ宇宙船への搭乗に伴い、今後の宇宙飛行士は英語だけでなくロシア語の習得も必須となります。その他、何か自分の得意な専門分野を持つことも良いことで、そこから宇宙飛行士の道が開ける可能性があります。
さらに大切なことは、宇宙飛行士はチームワークが重要です。チーム活動において、自分がリーダになればメンバーを引っぱってチームを運営し、自分以外の人がリーダになっていれば、リーダをサポ―トしてチーム活動を円滑に進めていく、このどちらも出来ることが重要です。
更Q.若田飛行士はどの点が優秀でしたか
【回答】
すべてが優秀ですが、若田飛行士は高校時代硬式野球のキャッチャーでキャップテンをやり、チームをまとめることに優れていてメンバーから信頼のおけるリーダーであったようです。
ですので、国際宇宙ステーション全体を取りまとめる船長にもなりました。
なんと言っても人柄と私は思っています。
Q4.宇宙ステーションに合体したこうのとり(!?)を包んでいる金色の紙は何の為ですか?どのような意味があるのでしょうか?
【回答】
この金色をしたものは、「サーマルブランケット」というもので、外部から人工衛星(こうのとり等)に入ってくる熱を遮断するものです。
人工衛星(こうのとり等)の内部にはいろいろな機器が入っており、それらの機器からの発熱によって内部の温度は上昇します。この温度上昇は、機器に悪い影響を与え故障の原因となることがありますので、ほとんどの衛星は放熱(内部にたまった熱を宇宙空間に捨てる)するための工夫(ラジエターの様なもの)がしています。
しかしながら、宇宙空間にある人工衛星(こうのとり等)は、直接太陽の光にさらされいる部分の温度は100度以上にもなります。また、真空であるため日陰の部分は逆にマイナス100度以下にもなるという過酷な条件にさらされています。
従って、太陽に照らされることによって受ける熱が人工衛星(こうのとり等)の内部に入ることを極力防ぐことが重要となります。
「サーマルブランケット」は、太陽からの熱が人工衛星(こうのとり等)の内部に侵入することを防ぐための、例えば消防士が着用する耐熱服のような役割をします。
「サーマルブランケット」の素材や構造は以下のようなものです。
カプトン(透明な薄いセルロイドのようなもの)の裏面にアルミニユムを蒸着させます(鏡を作るような感じです)。この厚さは10マイクロメートルから20マイクロメートルと、とても薄いものです。
マイクロメートル=メートルの100万分の1
このカプトンを何枚も重ねますが、重ねる時にカプトン同士の接触による熱伝導を防ぎ断念効果を高めるために、「ダクロン(紙のようなもの)」を間にはさんで糸で縫い合わせます。つまりカプトンとダクロンのサンドイッチ構造になります。このカプトンとダクロンを10層から20層を重ねますが、何層にするかは、それぞれの衛星の熱設計によって異なってきます。
Q5.いつもロケットの打ち上げの度に、南東の空を見上げ、ロケット?の確認をすることを楽しみにしています。川内宇宙館のファンですが、宇宙への夢を見るのが楽しみです。
一つ質問ですが、種子島と内之浦との発射を比較すると、失礼ですが、内之浦の方が失敗が多いようですが、不思議に思っています。
日本のロケット開発は1955年に長さ23Cm程のペンシルロケットの横打ち上げから始まりました。その後、宇宙科学研究の目的で徐々に大きいロケットを日本独自の技術で開発していきますが、この技術開発は初めてのことが多く打ち上げ成功にはなかなか至らない事がありました。
方や、種子島からのロケット打ち上げは、皆さんへ直接役に立つ「実利用衛星(通信・放送、気象など)」の打ち上げを目的にし、なるべく早くこれを実現するため米国の信頼(実績)ある液体ロケットの技術導入を行いながら(勉強しながら)ロケットの開発をやってきましたが、ロケットの重要な技術について米国は開示することをやって貰えなく、日本独自のロケット(100%国産ロケット)で大型の衛星を打ち上げようとなりました。
100%国産ロケットが現在打ち上げているH-ⅡAロケットの一つ前の「H-Ⅱロケット」でしたが1段エンジンの開発に手間取り当初の開発スケジュールを何度か見直しがあったものの、1994年に1号機の打ち上げに成功し、その後6回打ち上げを行いましたが、打ち上げコストが他国のロケットに比べとても高いため、コストを押さえた新たなH-ⅡAロケットを開発し、2001年に1号機を打ち上げ、2003年の6号機の失敗はあったものの、現在36機打ち上げてきました。
打ち上げ成功率は、97%を超えており他国のロケットに負けない成功率です。
これまで、内之浦からの打ち上げ機数は400機を越えているのに対し、種子島は170機ほどで、内之浦は、手探りの状況で独自で科学研究用の固体ロケットを開発しての打ち上げに対し、種子島は前述しましたが米国の技術を導入しながらも早期に実利用衛星打ち上げを行う国産の液体ロケットを開発して打ち上げしてきたという、両者の歩んできた違いがあるところがあります。
Q6.①ロケットはっしゃだいは、ふんしゃの火でもえないよう何でできていますか?
【回答】
金属(かたい鉄)でできています。ロケットのふんしゃする熱は3000度にもなるので、ふんしゃを受けるところには、熱に強い材料(だんねつざい)を使ったり、打ち上げ前にたくさんの水をまいたりしてロケットのふんしゃする熱からはっしゃだいを守ることをやっています。
しかし、このようなことをやっても焼ける部分がありますが、はっしゃだいは、つぎの打ち上げにも使われるので修理します。
Q7.昔々、ロケット開発は戦争目的のためと聞いたことがありますが、やはり、それが開発の発端だったのでしょうか?宇宙のことを深く知り、平和のためになるよう願っています
発端はそうだったかも知れませんが、日本の宇宙開発は国の法律(宇宙基本法)の第二条(宇宙の平和的利用)で宇宙開発利用は、日本国憲法の平和主義の理念にのっとり、行われるものとする。
第三条(国民生活の向上等)では、国際社会の平和及び安全の確保並びに我が国の安全保障に資するよう行われなければならない。
に基づいて行われています。
Q8.最近、映画「ドリーム」を見ました。女性の活躍にびっくりしました。
JAXAには、1700名のうち女性職員は、何人いらっしゃるのですか?
【回答】平成29年4月現在、JAXA全体の職員数1,529名で、うち女性は、270名(全体の約18%)です。
Q9.NASAとJAXAはどう違うのですか?
【回答】
『アメリカ航空宇宙局』(National Aeronautics and Space Administration)NASAは、アメリカ合衆国における宇宙開発政策を担う機関です。
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace eXploration Agency)JAXAは、日本の宇宙開発政策を担う機関です。
Q10.宇宙ステーション本体から伸びるロボットアームは、どこで誰が操作してるのでしょうか? (人?、システム制御)
宇宙ステーション本体の大きなロボットアームを操作する場所は、ステーションの中にあって、実際の操作は宇宙飛行士自らが船内の画面等を見ながらハンドコントローラで操作します。
宇宙ステーションの組み立て作業や修理作業、宇宙飛行士の船外活動に使われますが、日本の輸送船「こうのとり」や他の国が打上げた輸送船を宇宙ステーションに取り付けにも使ったりしています。
Q11.ミサイルとどう違うのですか(作り、構造)、燃料は一緒?
【回答】
ミサイルは、軍事兵器のことで先端部に爆発物等を搭載して標的や目的地に着弾させるものですが、ロケットは、先端部に人工衛星や宇宙探査機などを搭載して宇宙空間の特定の軌道に投入させる手段として使われるものをロケットと言っています。
ロケットの燃料は、固体燃料、液体燃料がありますが、液体燃料には液体水素や石油系(ジェット機の燃料に近い等)燃料を使っています。固体燃料ロケットの推進剤は、一般的に燃料(ブタジエン系の合成ゴムなど)と酸化剤(過塩素酸アンモニウムなど)を均一に混ぜ合わせて固めたものを使用しています。
ミサイルについては同じかどうか、承知していませんのでお答えすることは出来ません。
Q12.ロケットには、お金が何円ぐらいかかりますか?
現在、日本の主力ロケットのH-ⅡAロケット、H-ⅡBロケットの打ち上げはJAXAが持っている種子島宇宙センターを民間(三菱重工業)が借りて打ち上げを行っています。価格はいくらか明かしていませんのでよく分かりませんが、新聞などの報道では100億円前後と言われています。
Q13.今何機人工衛星が宇宙にありますか?
【回答】
これまでに世界各国で打ち上げられた人工衛星は2017年2月時点で7,600機を越えており、地上に回収されたものや高度が下がって落下(燃え尽きたもの)したものを除いても、軌道上の衛星は約4,400機以上あります。
Q14.宇宙に出るとき、ロケットの空気がにげていきますか?
ロケットは、打ち上げからだんだんと高度を上げていきますが、高いところになるにつれて空気(大気)が少なくなってきて、いずれは空気(大気)が無い宇宙空間を飛んでいきます。空気があるところから空気が全く無いところに飛んで行くのでだんだんと空気(大気)が薄くなっていきます。
【回答】
液体ロッケトエンジンからの噴射ガスは、3,000度になります。
以 上